------ 前書き ------
 
どうも、二度目の投稿になるHIROです。
今、別のサイトで姫百合SSを連載しているのですが、これはその後日の物語です。
 
簡単に状況を説明すると、貴明は現在高校三年生です。姫百合姉妹は二年生で、
イルファ、ミルファ、シルファの三人と一緒にマンションに住んでいます。
要はゲーム本編の姫百合エンドから一年ちょい後の話ですね。
とりあえず、それだけ分かってもらえれば、今回のSSはおっけーです。
 
それでは、物語スタート〜。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
六月十六日の夕方、俺は姫百合家のマンションにいた。
明日は休みではないので、本来俺は自分の家に帰るのが普通だ。
でも今日は特別に、みんなと一緒にお泊りする予定になっている。
今年から用意されている、俺専用の部屋の超キングサイズのベッドで。
 
え? 何故かって? それはもちろん----
 
「貴明〜、ちゃんとやっとるか?」
「あ、ああ。やってるよ、大丈夫」
 
おっと、手の方がおろそかになってたな。
台所でイルファさん、ミルファ、シルファと一緒に今日のための料理を作っている
瑠璃ちゃんからチェックが入ってしまった。
 
俺と珊瑚ちゃんはテーブル周りの飾り付け担当だ。
ちょっとした物だけど、こういったのがあると気分が違うからね。
 
「貴明、ぼーっとしてたらアカンよ」
「分かってるよ、珊瑚ちゃん。よし! 気合を入れ直すか、みんなのために!!」
 
そう、今日は六月十六日------みんなの誕生日だから。
 
 
 
 
 
 
 〜珊瑚ちゃん・瑠璃ちゃん 誕生日記念SS〜
 プレゼント 
 
 
 
 
 
 
「それでは……みんな、誕生日おめでとう!」
「「「「「 おめでと〜 」」」」」
 
みんなの誕生会が始まった。
机の上には、いつもよりちょっと豪華な料理。
小さいながらも手作りケーキまで並んでいる。
俺と珊瑚ちゃんで頑張った飾り付けが、それらをより華やかにしている。
去年やった珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、イルファさん三人との誕生会より人数が多い分、
賑やかさもより一層だ。
 
去年俺が出した提案----
珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんの誕生日をイルファさんの誕生日にするという提案----
みんなで一緒にお祝いするための、みんなで決めた誕生日。
 
それは二人増えた今年も同じ様に適用していた。
 
 
 
「はい、貴明、これ食べてこれ。私が作ったんだから」
 
その内の一人、俺にイスをピッタリ寄せて側に座っているミルファが、
瞳を輝かせながら料理を俺に差し出してきた。
 
「どれどれ……うん、美味しいよ、ミルファ」
「ホント! 頑張ったんだよ、私の誕生日だし!!」
 
……まあ、コイツは何か誕生日を勘違いしてるみたいだけど。
でも、本当に料理は美味しい。初めの頃の事を考えたら格段の進歩だよな。
ミルファが来てからの月日を感じるよ。もう、一年か。
 
 
「パパ、ママ、瑠璃お姉ちゃん、後でちゃんとシルファの作ったケーキも食べてね?」
 
そして新たに加わったもう一人、シルファが三つ編みおさげの頭をちょこっと傾げ、
期待に満ちた目でこっちを見ている。
 
「分かってるよ、シルファ」
「当たり前やないか、残さず食べるで」
「しっちゃんも、頑張ってたもんな〜」
 
みんなに応えられ、表情がパアッと明るくなるシルファ。素直ないい子だよな。
 
まだ一人での遠出は無理だが、行きつけの商店街への買い物、俺やこのみの家には
行ける様になったシルファ。引っ込み思案なところも大分改善してきた。
色々あったけど、この間のテスト入学も良い経験になったと思うし。
 
そんな二人の事を考えたりしながら、食事は和気あいあいと進んでいった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「はい、それでは俺からみんなへのプレゼントタイムです!」
 
パチパチパチパチ----
笑顔と共に、拍手が起こる。
 
食事と後片付けを済ませリビングに移動した後、俺は約束していたみんなへの
プレゼントを持ってきた。
事前にある程度要望を聞いた上で、俺が用意できる物を選んだのだ。
まあ、ある意味、本日のメインイベントと言えよう。
 
 
「じゃあ、まずは珊瑚ちゃん」
「貴明、ありがとな〜☆」
 
俺が渡したのは、ウサギ柄のロングクッションだ。
シルファの『ママ』である珊瑚ちゃんは、基本的にいつもシルファと一緒に寝ている。
そのシルファが大好きなのがウサギグッズなのだ。
それで珊瑚ちゃんはウサギグッズを集めており、俺にそれ関係の要望が出た。
そこで、まだ多分なかったと思った、二人の枕代わりにもなるこれを選んだのだ。
思った通り、喜んでくれて嬉しいよ。
 
 
「でもな、ウチが本当に欲しいのは貴明の赤ちゃ----」
「はい、次は瑠璃ちゃんだね」
 
危ない話題を軽くスルーして、瑠璃ちゃんにプレゼントを渡す。
頼まれていた新しい包丁だ。商品指定までされていたので、迷う事はなかった。
 
「ん、あんがと」
 
そっけない返事の瑠璃ちゃん。まあ、自分で言った物だしな。
後で気付いてくれるといいけどね。中に一緒に入れておいた物に。
いつも家事をやってくれている瑠璃ちゃんのための、良く効く手荒れ防止クリームに。
 
 
「瑠璃様、貴明さんが何か……? そんな危ない物を頼まれるなんて」
「危ないのはイルファさんの思考回路デス。それよりこれ……頼まれてた物」
 
俺はイルファさんに封筒を渡した。
 
「せ、成功したのですか? 貴明さん」
「……一応ね。雄二に協力してもらって」
「あぁ、この中に……。貴明さん、私、もう色々とあふれそうです……はぁ……」
「ちょっ、今開けちゃダメですって!! 頼むから勘弁して下さい……」
 
すでにこの時点で、瑠璃ちゃんからの疑惑の視線が痛い……。
そう、瑠璃ちゃん、正解デス。中身はあなたのブルマ姿の写真デス。
バレたら本当に殺られます。
 
 
「ねぇねぇ、貴明、私のは?」
 
続いて、鼻息も荒くにじり寄ってきたのはミルファ。
 
「……ほらよ」
「えっ!? ホントに……いいの?」
「……今回だけだからな」
 
渡したのは一枚の俺の手作りのチケット----『河野家お泊り券』
世間体もあり、今までは俺の家でのお泊りは許してなかったのだ。
それに、一度でもお泊りを許したら、コイツはそのまま住みつく可能性大だったし。
 
 
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・きゃっほぉーーい!!」
 
歓喜の声を上げ、リビングの中を小躍りして跳ね回るミルファ。
 
「……あのさ、どうでもいいけど、パンツ丸見えだから」
「おやおや〜? せっかちだね、早くも戦闘準備完了? 貴明ジェットはもうテイクオフ?」
「意味分かんねぇよ! 少しは恥じらいを持て!! ……そんなに俺の家に泊まれるのが
嬉しいのか? お前が望んでる事は、別に俺の家とか場所は関係ないだろ?」
「チッチッ……それは違うよ、貴明。ご主人の家で結ばれてこその専属メイドロボ
なんだから。何ていうか……気持ちの問題なんだよ」
「そうですよ、貴明さん。そんなちょっとした事が女の子には重要なんです」
「さすが姉さん! 分かってるぅ!!」
 
いや、イルファさん……いいセリフに聞こえるけど……。
さっきの封筒を胸に抱き締めたままじゃ台無しデス。
 
とりあえず、この手を取り合っている色欲コンビは置いてといて……。
 
 
「後はシルファだね。欲しい物は決めてきた?」
 
俺はシルファに尋ねた。
前から欲しい物を聞いてはいたのだが、遠慮がちなシルファは要望を言わなかったのだ。
それで、当日までに決めておく事を宿題にした。
ちょっと強引だったけど、そうでもしないと何も要らないの一点張りだったからね。
 
「うん、パパ。良く考えたら、とっても欲しいものが一つだけあったの」
「そうか、遠慮せずに言っていいよ。俺がやれる物なら何でもあげるから」
 
多分、俺は油断していた。失言だった。
かつて、純真であるが故に、いくつもの爆弾をシルファが投下してきた事を忘れていた。
 
 
「あのね、パパとのちゅー。ママとしている様に、お口とお口のちゅーがしたい」
 
 
おそらく、今までで一番の核爆弾。
パアッと笑顔の珊瑚ちゃん。
険しい眼差しの瑠璃ちゃん。
生暖かい微笑みでやさしく見つめているイルファさん。
口を開けたままポカンとしているミルファ。
 
そう、忘れていた。珊瑚ちゃんとマウストゥーマウスのキスをする様になってから、
いつもシルファが俺とのそのキスを望んでいた事を。
 
欲望に忠実な二人の姉とは違い、シルファはどこまでも純真だ。
研究所の方でも、その汚れのない瞳に長瀬さん達もやられたのか、そういった知識を
プリインストールされていなかった。
体つきは俺達と変わらないシルファと一緒にお風呂に入っても大丈夫なのは、あくまで
『パパ』という立場になり切れるからだ。
しかし、口と口とのキスというのはどうも……気持ちの問題で……。
 
 
「あのね、前にも言ったけど、男の人とのキスはもう少し大人になってから……」
「……シルファ、まだダメな子なの? 家事も頑張ってるし、友だちだってたくさん
できたよ。メイドロボとして、まだダメなの……?」
 
ううっ……。目の前でうなだれてシュ〜ンとなるシルファの姿が心に痛い……。
ああ、どうしたら……。
 
 
「これは、そろそろちゃんと考えなければいけない問題です、貴明さん」
 
困り切っている俺に、イルファさんが進言してきた。
 
「姫百合家に来てから、シルファちゃんは精神的に成長してきました。今は、次の
ステップへの過渡期なんです。言わば、思春期に入りかけているところなんです。
今回はパパとしてでよろしいですから、きちんとして下さい」
「パパとしてって……」
「欧米とかでは普通でしょう? このまま悩ませているままでよろしいのですか?」
「そう言われると……」
「どの道、いずれシルファちゃんも貴明さんのお相手をする事になるのですよ?
変にじらしたままで、雄二さんとかと初キッスする様な事になってもいいので----」
「それはダメ!!」
 
心からの即答だった。スマン、雄二。
 
何か、イルファさんにうまい事誘導尋問された気がするけど……。
 
「……分かったよ。キス……するよ、シルファ」
「えっ…………本当、パパ?」
「うん、今日はシルファの誕生日だしね」
 
曇っていたその顔が、お日さまの笑顔に変わる。こっちの心も暖かくなる。
やっぱり、いつも明るく微笑んでいてのこそのシルファだな。
 
 
しかし問題は----
俺は恐る恐る、ニコニコ顔の珊瑚ちゃんの隣の二人に目を向ける。
 
「……ええけど、あくまで『パパ』としてやからな、貴明」
「……承知してるであります、瑠璃隊長」
 
凍えそうな視線を受けつつ、とりあえず一人目クリア。
できれば、プレゼントした包丁の箱を握り締めるのはやめて下さい、瑠璃ちゃん……。
 
「……貴明様、言っておきますが『心』の浮気は許しませんよ」
「……すでに敬語デスね……。承りました、ミルファさん」
 
そう、コイツはすでに『ベアーモード』に入っていた。無表情がかえって怖い……。
暴走しないのは、相手がかわいい妹であるから、その理由一点だけだろう。
 
 
一応(本当に一応)、問題の二人の了承は得た。
俺はシルファの方に向き直る。
 
俺と目が合ったシルファはスッと立ち上がると、
 
「それではパパ、よろしくお願いします」
 
姿勢良く、嬉しそうにペコリとお辞儀をした。
 
「う、うん、じゃあ……」
 
俺は一歩前に出て、シルファの肩に手を置いた。自然とお互いに見つめ合う。
シルファは少し頬を染め、はにかんでいる。
 
うっ……ヤバイ……鼓動が高まっていく。
改めて思うが、シルファって美少女だよな……。
円らなやさしい瞳、スッと通った鼻筋、ちょっと小さめの桜色の唇----
今、俺を待っている、少し半開きのやわらかそうなその唇----
 
 
「あの〜、パパ……」
 
----っと!? その唇から出た声にふと我に返る。
 
 
「……ちょっと……痛いです。もう少しやさしく……」
「あっ!? ご、ごめん、シルファ」
 
ヤバ…肩を抱く手に力が入ってしまったみたいだ。
何気にシルファに危ないセリフを言わせてしまったよ。
いかん、いかん、俺、全然パパじゃねぇ……。
 
そして背後から、感情のこもってない冷たい声が----
 
「何しとるん? パパ……」
「ふふふ……貴明様ったら……」
 
うおっ……本当にヤバイ……。もう怖くて後ろは振り向けねぇ……。
 
 
でも、おかげで頭の中は覚めた。そうだ、俺はパパなんだ。
俺は改めてやさしくシルファを抱き寄せる。
ちょっと照れながら、シルファはそっと目を閉じた。
 
「お誕生日おめでとう、シルファ……」
「パパ……」
 
ゆっくりと重なる唇。初めてのシルファとのキス。
軽く触れるだけの、パパとしてのキス。
でも、どこか心の奥がジーンと痺れた感じがした。
 
 
唇を離し、シルファを見つめる。
瞳を開くシルファ。どこか惚けた様なその表情。
 
「シルファ、大丈------っと!?」
 
心配になって声をかけようとした矢先、シルファの膝がカクッと折れる。
俺はあわてて抱き止めた。
 
「貴明、テクニシャンや〜☆」
「貴明さんは、シルファちゃんの初めてを全部持ってっちゃいますね♪」
「そこ! そんなボケをかましてる場合じゃない!! シルファ、大丈夫か!?」
「う、うん……。大丈夫です、パパ」
 
俺の呼びかけに、焦点の定まらない瞳でうなずくシルファ。
気が付くと体も少し熱い。どうやらオーバーヒートを起こした様だ。
一応、念のため、珊瑚ちゃんの側に寝かせた。
 
「大丈夫かな? 珊瑚ちゃん」
「うん、休ませれば大丈夫やと思うよ。しっちゃん、少し早いけど、
スリープモードに切り替えた方がええよ」
「はい、ママ。それと……迷惑かけてごめんなさい、パパ……」
 
シュ〜ンと縮こまり、上目遣いのシルファ。相変わらずの子犬チックだ。
俺は、そっとシルファの頭をなでてあげた。
 
「迷惑なんかじゃないよ。でも、やっぱりシルファにはキスは早いみたいだね」
「う、うん……」
「さ、そろそろお休み」
「はい。  ……あ、パパ、でもね……」
 
頭をなでられている事もあるのだろうが、どことなく照れた感じで、
モードを切り替えながらシルファが言った。
 
「あのね、ママとのキスは、暖かくて幸せ一杯になれるの。でもね、パパとのキスは……
一杯になりすぎてあふれちゃう感じなの、不思議な感じ。だから、たまにでいいから、
またキスして欲しいな……」
 
微笑みながら瞳を閉じて、スリープモードに入っていくシルファ。
今見えたのは、幼いながらも一人の女の子としての表情だった。
まだ自分としては、やっぱりパパとしての気持ちが強いだけに、複雑な心境だ。
いつかみんなと同じ様に、自分に恋するこの子がいるのだろうか……。
まあ、いずれにせよ、ちゃんと幸せにしてやらなけりゃな……。
 
 
ん? 気が付くと珊瑚ちゃんが俺ににじり寄ってきている。
 
「どうかしたの? 珊瑚ちゃん」
「しっちゃん見てたら、ウチもちゅーしとぉなった〜☆」
 
ああ、いつものお約束か……。
 
「あら、珊瑚様、抜け駆けはダメですよ。貴明さん、私もお願いできますか?
なんでしたら、もうこのままハーレムエンドに----」
「ダメーーーーーー!!」
 
にわかに騒がしくなったリビングに怒号が響く。
そう、その声の主は、ここまで沈静を保っていたミルファだった。
うつむいたまま、ブルブルと震えている。
 
 
「貴明……」
 
ユラ〜リとその視線が俺を捕らえる。ヤ、ヤバイ、殺られる!?
 
「うわ〜〜〜〜〜〜ん!!」
「んむぅう!?」
 
意表をついて、半べそで俺に突進して抱き付いてきた赤い髪のクマ。
冬眠から覚めて初めて見つけた獲物の様に、俺は捕獲され、強引に唇を奪われた。
 
「ずるいズルイずるいズルイずるい! 私にもあんなちゅーしてよ!!」
「浮気はダメって言ったよね!? あんな心のこもったキスはダメ!!」
「私が貴明の専属メイドロボなんだよ! 私が貴明の一番なの!!」
「私が元々特別なオンリーワンなのにぃ〜〜! うわ〜〜ん!!」
 
マシンガンの様に浴びせられる罵声と泣き言。
あ〜あ……駄々っ子になっちゃってるよ……最後の方はもう意味分かんないし……。
 
 
「あらあら、ミルファちゃんたら。では、私も……瑠璃様♪」
「ちょっ……イルファ、抱きつくな! ----って脱がすな!! 脱ぐなぁ!!!」
「貴明さんからのプレゼントで、もう抑えてられないのです……。あ、抵抗は無駄ですよ、
言うならば、今の私は超(スーパー)イルファ、いえ、超イルファ3なのですから」
「何でスリーやねん! 貴明ぃ!! 何をプレゼントしたんやぁ!!!」
「みんなラブラブや〜☆ ウチも〜」
 
向こうは向こうで大変そうデスね。
いえ、こっちはもうミルファに襲われてるんデスけどね……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ふぅ……」
 
ふと時計を見ると、深夜0時を回ったところ。
体は疲れてるんだけど、色々バタバタしたせいか、何か寝付けない。
 
あの後それぞれの戦いが終わり、今は俺の部屋で六人一緒に寝ているところだ。
ちなみに、俺の両隣は珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃん。
一応、イルファさんとミルファが気を遣ってくれた。
(さっきの戦いで、それなりに満足したみたいだからだろうけど)
 
 
「ん……。貴明、起きてるん?」
 
あ、起こしちゃったかな。隣でモゾモゾしながら珊瑚ちゃんが聞いてきた。
 
「まぁね、何か眠れなくて。ゴメンね、起こしちゃった?」
「ううん、気にせんでええよ。それより、今日はお疲れさま」
 
そう言うと、珊瑚ちゃんは軽くキスをしてきた。
 
「はは……本当にお疲れだったのは瑠璃ちゃんかもね」
「……ホンマに疲れたわ」
「うわっ!? 起きてたの、瑠璃ちゃん?」
「二人の話し声でな。貴明、イルファのプレゼントの件は後でユックリ聞くな……」
「あはは……」
 
笑ってる場合じゃねぇ……。俺、今日何回死の危機にさらされてるんだろう……。
 
 
「そうや、プレゼントで思い出した〜。貴明、何か欲しい物あらへん?」
「欲しい物って……俺、誕生日でも何でもないよ?」
「うん、瑠璃ちゃんとも相談したんやけどな、いつも貴明からはもらってばかりやから……。
ウチらからも何かプレゼントしよういう事になったんや」
「そんな、俺は別に何も……」
「貴明はいつもみんなのために頑張ってくれとるしな」
「いや、それは……」
「ええから! ウチらがやる言うねん。もらっとけばええんや」
「瑠璃ちゃん……。二人とも、ありがと」
 
俺からはもらってばかりか……そんな事はないのに……。
頑張ってるって……最近あまり遊ばずに受験勉強をしている事とかかな……。
 
そりゃあ、みんなのために色々とやっているのは確かだ。
でもそれは、努力とかそんなんじゃない。
俺がそうしたいから、俺自身のためにやってるんだ。
 
それに、もらっているモノは俺の方がはるかに大きい。
毎日の美味しい料理、お弁当。勉強だって、教えてくれているのは珊瑚ちゃんだ。
 
そして何より大きなモノ……俺を迎えてくれる、あたたかい空間。
陽だまりの様にやさしく包んでくれる、俺の居場所。
そう、みんなの笑顔から、俺は一杯の元気と幸せをもらってるんだ。
 
 
プレゼント、か……それなら……。
 
「それじゃ、もう少し先の話になるけど……『姫百合』の名前をもらってもいいかな?
今から、予約しておきたいんだ」
 
俺は最近考え、そして決めた事を告げた。
二人とも、ビックリした表情で俺を見つめている。
 
「……貴明、それって……」
「プロポーズかな、一応……ははっ、照れるね」
 
俺を見つめる珊瑚ちゃんの顔が、驚きから、心からの笑顔に変わっていく。
瑠璃ちゃんは、黙って俺の腕にそっと抱き付いてきた。
 
 
「……でも、姫百合の名前って……貴明はええの?」
「うん、色々考えたんだけど……。河野って名前は一人にしかあげられないから」
 
そう、法律上、河野の名前は一人にしかあげられない。
 
「形式上だけど……やっぱりみんな一緒がいいな、と思ったから。俺が姫百合貴明に
なれば問題ない訳だし。あれ? 似合わないかな……姫百合貴明?」
 
照れ笑いする俺に、またやさしくキスをする珊瑚ちゃん。
 
「本当にありがと……こちらこそ、よろしくな」
 
そう言うと、珊瑚ちゃんは腕にギュッと抱き付いてきた。
 
「ウチも……ずっと一緒やで、貴明」
 
反対側の瑠璃ちゃんも、抱き締める腕に力を入れてきた。
 
 
二人の体温が、心地良く俺の体に伝わってくる。
それぞれの温もり、それぞれの想いがお互いを包み合う。
 
安らかな時間の中、やがて聞こえてきた二つの寝息を感じながら、
俺も眠りに落ちていく……。
 
 
いつも一緒に、ずっと一緒に。
みんなで一つ、陽だまりの中で。
 
これからも、この幸せが続きますように……。
 
 
happy birthday  Sango & Ruri and..Ilfa,Milfa,Silfa
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
------ 後書き ------
 
いかがだったでしょうか。
私の作品の中での、姫百合エンド後の二度目の誕生日SSでした。
 
『姫百合貴明』というネタは、まだ私がこんな風にSSを書く様になるとは
思っていなかった、去年の今頃に思いついていたモノです。
PS2版で、姫百合シナリオをクリアした直後あたりでしたかね〜。
みんなで一つ、という形を考えた時に、これが一番自然かな……と。
 
まあ、お約束ネタではあるのですが、自分なりに頑張って調理してみました。
少しでもみなさんの心の栄養分になったのなら幸いです。
少々アクが強い部分があるので、食あたりも心配ですが(笑
 
この作品に興味を持たれた方、連載中の三姉妹SSもよろしくお願いします。
それでは、後書きまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
ご意見・感想等、いただけると嬉しいです。 by Hiro

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   投稿者のHIRO様、本当にありがとうございます。
   管理人として、心からお礼申し上げます。
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