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「貴明さん……じゃあ、覚えてるんですね!」「草壁さんもね!」鼓動が高鳴っていく----幻じゃない……君なんだね、草壁さん!一緒に真夜中の時間を過ごしてきた、君なんだね!!俺を見つめる草壁さんの大きな瞳から涙があふれる。そして、一度目をつぶると、大きく息を吸い込み----「貴明さん! 貴明さん!!」一気に俺に駆け寄り、胸に飛び込んできた。俺の名前を叫びながら、それまで抑えていた感情をぶつけるように……。「これって、四度目の運命的出会いです!」二人で流星雨を見た学校の屋上での様に、俺の中で泣きじゃくる草壁さん。だけど、あの時とは違う。涙で濡れたその顔……でも今は、一杯の笑顔であふれている。俺はその体をギュッと抱き締めた。伝わってくる、その温もり……そしてその想い。今、確かに、草壁さんはここにいるんだ……本当に良かった……。上に
「へぇ、じゃあ草壁さんの家は近所なんだ。通学路も同じみたいだね」「えっ!? そうなんですか? それは……運命的ですね」「……これも、運命的なの?」「はい、とっても運命的です♪」ちょっと苦笑いする俺に、うれしそうに微笑む草壁さん。俺達は中庭の通路のベンチに座り、それぞれの事を話しているところだ。主な話題は小学校の頃の話。良く一緒に遊んでいた、楽しかったあの頃の話。髪の左側をちょこっと結んだ、カワイイ姿が鮮明に浮かんでくる。なぜ今まで草壁さんの事を忘れていたのか、不思議なくらいだ。草壁さん曰く、それは彼女がタイムリープしていた事に関係があるらしい。まあ、詳しい事は良く分からないんだけどね。それにしても……そうか、草壁さんの家は近所なのか。子供の時は家が離れていたから、一緒に遊んだのはほとんど学校でだけだったけど、これからは時間がとれそうだな。よし! それならとりあえず今日----「あの~、貴明さん……」ちょっと考え事をしていた俺に、草壁さんが手を口の所に当て、下から覗き込む様に少し上目遣いでおずおずと声をかけてきた。あれ? 確かこのポーズは……。「ん? どうかしたの?」「えっと……その……だったら……その……」モジモジしながら、要領を得ない問いかけを繰り返す。……やっぱりそうだ、思い出した。俺に何か頼み事をする時の、草壁さんのクセだ。小学校の時、おとなしくて一人でいる事が多かった草壁さん。アメオニをきっかけに親しくなった、俺に見せてくれていたその仕草。俺以外のクラスの他の人にはあまり見せていなかった、その仕草。子供心に、どこかそれをうれしく思っていたのを覚えている……懐かしいな。という事は、俺に何かお願いしたい事があるのか。あっ……多分、俺と同じ事を考えていたんじゃ……? それなら、俺が先に----「……あのさ、草壁さん。良かったら、今日一緒に帰らない?」「えっ!? あ……」俺の言葉に、目を大きく開き硬直する草壁さん。あ、あれ? もしかして草壁さんが言いたかった事は違うのかな?だとすると、えらく先走りなセリフになっちゃったんだけど……。「……どうして、私の考えている事が分かったのですか? ひょ、ひょっとして、貴明さんも何か能力を……?」……深く考えすぎか。そうだった。草壁さんはこういう子でもあったんだよな。天然というかなんというか……こんなところも変わってないなぁ……。俺はまだ驚きの表情でいる草壁さんに、軽くデコピンをした。「あっ!? え……た、貴明さん?」「……あのさ、そんな訳ないだろ。話の流れとか、態度とかでバレバレだって」「そ、そうですか……すみません」顔を赤くして、身を縮め込ませる草壁さん。ま、考えてた事が当たっていて良かったよ。「でも一瞬あせったよ。草壁さんはそういうのはダメなのかな、とか考えたりしたから」「え……?」「いや、一緒に帰ったりとかは恥ずかしくて嫌なのかなって----」「そんな事はありません!!」うわっ!?突然すごい勢いで俺の目前に迫ってきた草壁さん。その顔は真剣そのものだ。「嫌なんて……そんな事あるはずがありません! 貴明さんの方から誘ってもらえて本当にうれしいです!!」「あ、ああ、そうなんだ」「そうです! 恥ずかしいなんて事あるはずがありません!! だって、貴明さんは私の将来の----って、あ……」「…………」草壁さんの言葉が止まる。そう、二人の顔は息のかかる距離にあった。高まっていく、心臓の鼓動。お互いに瞬き一つせずに見つめ合っている。やがて、強く俺を見つめていた草壁さんの瞳がやさしく潤み……そして、そっと閉じられた。俺も、ユックリと瞳を閉じる。どちらからともなく、重なり合う唇。俺達の、二度目のキス。最後に言おうとした草壁さんの言葉----それは多分、あの約束の事。小さかった俺が何気なく口にした、あの約束。でも、その子供の口約束をずっと草壁さんは信じて……俺の事を助けてくれて……。ありがとう……そしてゴメン、ずっと思い出せなくて。今はまだ、ちゃんとした形で応える事は出来ないけど……でも、きっと……。だから、俺は唇に想いを込めた。せめて、この気持ちが伝わるように----この胸の中にある、君を想う愛しい気持ちが伝わるように----やさしく、そして強く、いつまでも俺達はキスを続けていた……。そして、一限目の授業終了のチャイムが、その長いキスに終わりを告げる。俺を見つめる、草壁さんの視線がくすぐったい。「それじゃ、私は職員室に行きますね」「うん、また後で」「あ、貴明さんのクラスは何組なんですか?」「2-Bだよ」「そうですか……一緒になれるといいですね」「多分……そうなるんじゃないのかな? だって、俺達は……」「そうですね、私達は……」「「 運命的!! 」」「なんだろ?」「はい♪」お互いに、ニッコリと笑い合う。きっとこれから、二人の楽しい時間が続いていく。そう予感させてくれる、四度目の運命的出会いだった……けど……。「はぁ……」「?? どうかしました? さっきからため息が多いですけど……。やっぱり、今日一緒に帰るのは迷惑でしたか?」「……え? い、いや、そんな事ある訳ないよ! や、草壁さんと一緒の下校なんて、何か少し緊張しちゃうな~って」「そ、そんな、貴明さん……緊張だなんて……。あ、でも、それじゃ……私、明日からは朝一緒に登校したいと思ってたんですけど……ダメですか?」「…………え? いやいや、全然おっけーデスよ。一緒に登校、楽しいよね~……」「ホントですか! うれしいです!! あ、なんでしたら、朝ゴハンも作りに----」「いや、そこまでは……」今は放課後、草壁さんと二人で下校中。え? 何か俺の様子がおかしいって? あはは……そんな事……あります……。原因は、五度目の運命的出会い----そう、教室での事。ええ、やはり俺達は運命で結ばれている様で、同じクラスになりました。まあ、それは良かったのですが……。問題は、草壁さんの天然っぷりを量り違えていた事だったのデス。どうして俺の事を「貴明さん」と呼ぶのかとクラスのみんなに聞かれて(クラスでは「河野さん」と呼んでくれるかなと思っていた俺も甘かったですが)素直に草壁さんは『だって、将来私は河野の名字になるので……。だから「貴明さん」なんです♪』と明るく元気に、笑顔で答えて下さったのデス。その瞬間、私達はクラス公認『バ』カップルに認定されました。女子達の生暖かい視線と、男子連中、特に雄二からの冷たい視線が痛かったデス。……明日からも、続くんだよなぁ……。「~~♪」そんな俺の悩みを分かっていない草壁さんは、メロディーを口ずさみながら楽しそうに隣を歩いている。今日一日そうだったけど、本当にしあわせそうな笑顔だ。……ま、いっか。頑張りましょうかね。俺といる事が、その幸せな笑顔につながるというのなら。俺のために、全てを投げ出そうとしてくれた草壁さん。俺がしてやれる事はあまりないけれど、出来る事はしてあげたいしな。そう思わせる力が、その笑顔にはあるし。「貴明さん、どうかしました?」見られている事に気付いた草壁さんが、不意に尋ねてくる。もちろん、その笑顔で。「あ、ああ……草壁さんの家って、そろそろだよね? 早く見てみたいな~と思って。ほ、ほら、早く行こうよ。そこの横断歩道渡って曲がった先でしょ?」確かに他の女の子みたいに苦手という感じはしないが、やはりそうやって微笑まれるとドキドキする事は変わりない。っていうか、より緊張する。照れ隠しもあり、俺は先を急ごうとした。が----ガシッ!!急に強く、草壁さんから腕をつかまれる。「え、何? どうかしたの草壁----!?」……腕をつかんでいる草壁さんの顔は、悲しみに歪んでいた。どうしたんだ? 一体何が…………あっ!?……俺はバカだ! 大バカだ!!草壁さんの前で一番やってはいけない事をしようとしていた。あれだけ注意された事だったのに。……目の前の横断歩道の信号は赤だった……。「ゴメン……俺……こんな……」うまく謝罪の言葉が出てこない……後悔の念で一杯すぎて……。ついうっかりしていたとはいえ、草壁さんの想いを傷つけてしまったんだから……。「……もう、いいですよ。あまり謝らないで下さい、貴明さん。今度からちゃんと気を付けてくれればいいですから。ほら、顔を上げて、ね」うつむいている俺に、やさしく微笑みかける草壁さん。でも、無理をして作ったその笑顔は今の俺には痛い……。応える事が出来ず、変わらず沈黙するしか出来ない俺……。すると、草壁さんは----「……捕まえたっ」そう言って手を握り、真剣な眼差しで俺を見つめてきた。「……貴明さん。約束してもらえませんか?」「……約束?」「覚えていますか? 初めて私がアメオニをやった日、貴明さんに言った事……」「……。『私がオニになったら、ずっと河野くんの事、追いかけていいかな?』だよね」「……覚えててくれたんですね……ありがとうございます……。そして、私はずっと貴明さんの事を追いかけて……やっと、捕まえる事が出来たんです……」草壁さんの瞳から、涙があふれ出す……。「だから……これからはずっと……私を追いかけて……。そして……約束して下さい……もう……私の前からいなくならないって……ずっと、側にいるって……」もう、止まらなかった。次々と涙がこぼれていく。すがる様に俺を見つめている、その瞳から……。……そうだ。草壁さんはずっと暗い不安の中にいたんだ。「ゴメン……なさい……こんな縁起でもない事……。でも、私……」目に見えない何かに怯える様な瞳……あの時と同じだ。そう、転校する事を、名前が変わってしまう事を、俺に話していたあの時と……。今、俺の目の前にいるのは、不安に潰されそうになっていた子供の頃の姿の草壁さんなんだ。……だったら、俺のするべき事は決まっている。俺の出来る事で、少しでも草壁さんに元気を与える事をする、それだけだ。あの約束を胸に、ずっと俺の事を想い続けてくれた草壁さんのために。だから----「……捕まえたっ」俺は、そう言ってそっと草壁さんを抱き締めた。俺に出来る事----草壁さんの想いに応える事----「大丈夫。俺はいなくならないから……ずっと側にいるから……。草壁さんも、俺をずっと追いかけてくれるかな?」その言葉を聞き、小さくコクンとうなずく草壁さん。俺を見つめるその瞳に、力が戻ってくる。そしてもう一つの俺に出来る事----俺の想いを伝える事----「……好きだよ、優季」そう、大切なその言葉を伝えた。本当は、もっと早く伝えなければいけなかった言葉。形として贈る事の出来る、今の俺の素直な、想いを込めた大切な言葉。「……あ……あ……」腕の中の優季が震える。瞳からはいっそうの涙があふれてくる。でも、その表情に、もう悲しみの色はなかった。あるのは、輝きに満ちた喜びの光、ただそれだけだ。「私も……好きです……。ずっと……ずっと……大好きでした……」胸に顔を埋めてきた優季を、俺はやさしく包み込む。俺にとって大切な、掛け替えのないその存在を。これからも、こうやって二人の追いかけっこは続いていくんだろう。それはきっと、あの約束が果たされた後も。お互いの想いを伝え合って----そして、新しいお互いに出会い続けて----そんな幸せな未来を信じながら、いつまでも俺は優季を抱き締めていた。------ 後書き ------いかがだったでしょうか。私にとって久々の優季SSでした。書く事になったキッカケは「好き」という言葉、それをゲーム本編で貴明と優季、お互いに口にしていない事に気付いたからです。確かに二人の間に言葉は不要だったのかもしれませんが、少なくとも優季は絶対にその言葉を望んでいたはずですから。そしてその言葉を告げるのは男の役目、という事で、貴明に頑張ってもらった訳です。皆さんはどうお考えでしょうか? 共感していただけたのなら幸いです。ただ今回のSSには大きな反省点が……優季を悲しませすぎた事、それです!優季ファンとして自分に怒っています! どういう事だ、俺め!!ラストはハッピーエンドで締めましたが、過程はもう少し明るい話にしたかったですね。しつこいですが、反省しまくってます。それでは後書きまで読んでいただき、本当にありがとうございました。ご意見・感想等いただけますと、大変うれしいです。 by HIRO追伸(というか、ちょっとお知らせ)このSSを書く事になった本当のキッカケは、私が主に投稿しているサイトにて行われるTH2夏祭り(8月6日~)の作品からです。こちらのサイトでも、TOPページの下の方に応援バナーが張られていますよ~。そちらには、『爽やかで甘~い、ピュア&セクシー優季SS』を掲載予定です(意味不明こちらの管理人・柴犬様も参加されるこの企画、興味がある方はぜひ来て下さいね。
以上が、当サイトにご投稿頂いた『君に伝える……』になります。
投稿者のHIRO様、本当にありがとうございます。
管理人として、心からお礼申し上げます。
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